UMの雑記帳

ロールズとか政治学とか

ロールズ入門、概説の翻訳書

間があいてしまいました。サクッと書いて出して、後から改訂、追記する感じでなるべく更新を増やしたいと思います。

今日はロールズ概説書、入門書の翻訳について。残念ながら翻訳してます、出ますという話ではないです。
今月末から某大の院生の方と社会的協働を軸にして、ロールズのテクストを読んでいくので、頭を整理するためにまず入門書をいろいろひっくり返してみたのでした。
関連性が新たに見えてきたりしますのでね。

ロールズ関係の翻訳少ないなあと思うのですが、とくに入門書の少なさはもったいないよなあと思います。
たまにツイッター観察したりしても、重要だなあと思うわけです。

そういう問題意識はあったけど、しばらく前からどうでもいいかな~期に入っていました。
私の場合、専門分野について学生と読む機会はないし(1年生)、英語なら当然読みますし。
(前にやったらどうですか?って言われたことあったけど、私のような立場だとそもそもどうやって?みたいに思った)

学術出版の厳しい状況というだけでなく、流れてくる情報をみると、どうやら翻訳は「業績」とは認められにくいようですね。
もちろん、やられている優秀な「若手」の方もおられますけど、業績にもなればさらによいですよね。
私はそういうの気にしなくなっちゃったので、詳しくは知らないけど。

まあ手間は大変なんてもんじゃないですね。あと出したら致命的な誤訳はともかく、ほかもいろいろ言われるわけだし(言われてかまわないと思いますが)。

某翻訳の検討会に参加してみてその一端を垣間見ましたが、いや~大変だなと。
個人的な勉強として訳語の一覧表や邦訳のある文献、参照ページ一覧作ったりとかも含め、自分の読解のために非常に得るものがありましたが、自分でやるとなったらもうね。

ではいくつか紹介。

クカサス&ペティットロールズ:「正義論」とその批判者たち』(嶋津格・山田八千子訳)、勁草書房、1996年。
原著はPolity, 1990年ですが、30年以上たった今でも、『正義論』とその後の批判、70~80年代のロールズの検討など、十分に読む価値があります。
あと本書自体が、ロールズ研究「史」上の著作となり、今ふたたび検討されるべき論点、ヒントをたくさん提示してくれています。

Polityからは2010年に Sebastiano Maffettone, Rawls: An Introduction が出ているので、ぜひ翻訳をだして「アップデート」されてほしいですね。
いわゆる「転回」についても1章割いています。

Catharine Audard, Rawls, Acumen, 2007.
『正義論』『政治的リベラリズム』のフランス語訳を担ったオダール渾身の一冊。
これを読まずして、というぐらいおすすめです。

Percy Lehning, Rawls: An Introduction, Cambridge University Press, 2009.
これも体系の内的関連をおさえた非常によいもの。

Donald Moon, John Rawls: Liberalism and the Challenges of Late Modernity, 2014.
これは入門書ではないのですが、『正義論』ではなく『政治的リベラリズム』や『再説』などを起点として、ロールズの体系を読み解いていく優れたもの。
公正としての正義の変化、発展と、その基底にあるものがわかり、『正義論』の理解にも資するものです。

『正義論』に特化した入門書もあります。

Jon Mandle, Rawls′s A Theory of Justice: An Introduction, 2009.
各パートごとに検討、つまり第3部にもしっかりとフォーカス。

Frank Lovett, Rawls′s A Theory of Justice: A Reader's Guide, Continuum, 2011.
これが一番簡明なガイドですね。まさに『正義論』を読むガイドとして初学者にもおすすめです。

Introductionと日本の入門・概説書ってだいぶ違うのであれですが、日本の研究者のものも紹介。

川本隆史ロールズ』、講談社、1997年、新装版2005年。
先日再開した勉強会で読み始めた、ガリシャンカのロールズ思想形成史本を読んでいると、ヴィトゲンシュタイン『哲学探求』の影響がアーカイブ資料もふまえ検討されていました。
川本先生の本は97年ですから、当然アーカイブ資料使ってないわけですが、この点を入門書でも重要なものとして丁寧にとりあげていて、『正義論』へと至るロールズの丹念な読解だと、改めて。
シリーズと同じように、(できれば増補改訂して)学術文庫やちくま学芸文庫にいれて欲しいですね。

仲正昌樹『いまこそロールズに学べ』、春秋社、2013年、新装版2020年。
さすがの整理ですが、転回については…という感じですね。

盛山和夫リベラリズムとは何か』、勁草書房、2006年。
大学院受験のために一生懸命読んだ記憶が。「入門書」ではなく、また専門書でもない、噛みごたえのある本。
難しめ、1冊目に読む本ではないとは思いますが挑戦する価値がありますね。

あと複数人による教科書で、分配的正義の議論が中心ですが、宇佐美誠・児玉聡・井上彰・松元雅和『正義論 ベーシックスからフロンティアまで』、法律文化社、2019年の第1部もよいのではないでしょうか。