UMの雑記帳

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【本の感想】宇野重規『民主主義とは何か』

やる気がなくならないうちに投稿。

宇野重規先生の『民主主義とは何か』(講談社現代新書、2020年)を読み返している。
今のところ来年度の初年次ゼミでは、デモクラシーはこれを読む予定。

デモクラシーを学ぶには、歴史と制度と理念をバランスよく扱っていると、政治学科の一年生を相手にしている立場としてはありがたい。
どのコース、ゼミに進むせよ、いずれについてもある程度は知っといてほしいので。

歴史的なアプローチをとりつつ「今」にもつながり、制度と理念の双方をみすえ、文章も読みやすく、学生たちとどう読めるか今から楽しみにしているところです。

ロールズ周辺やってる人間として注目したのは、ロールズへの評価がこれまでの著作と比べて好意的であること。
本書におけるロールズの位置づけからくるのか(第4章の3において、アーレントとともに参加と平等の回復を目指してで登場)、別の理由なのかはまだよく分かってないですが。

『民主主義のつくり方』(筑摩書房、2013年)や「ロールズにおける善と正義」、大瀧雅之・宇野重規・加藤晋編『社会科学における正義と善 ロールズ「正義論」を超えて』(東京大学出版会、2015年)では、ロールズの「経済学的思考」、原初状態における「個人」のモデルについての検討はかなり批判的で(反発をともないながらも)とても考えさせられたのでした。
最近再開した勉強会で読んでいるロールズの思想形成研究を読みつつ、再検討したいところです。

なおロールズは、1975年の論文「善性への公正さ」においてS. ルークスによる「抽象的個人主義」批判に反論していたり、あと『正義論』第41節は比較的あまり読まれないとこかなと思いますが、大事なこと言ってます。
そのうえで、ロールズの理論枠組みやモデルをどう評価するかですね。

ともあれ『民主主義とは何か』においては、反省的均衡が民主主義論としてもつ意義を、正義の原理を「一人ひとりの個人が自らのものとしていく」(214頁)いとなみとして、「正義感覚」の議論とともに重要視しています。
結びでは再びロールズに言及し、しくみ・制度としての民主主義、終わりなき過程、理念としての民主主義の「両者を不断に結びつけていくこと」(全部傍点)が大事だと力説されています。
他にも、二原理の関係や財産所有の民主主義などにも言及されてますが、そうそう、そこ! 倫理学方法論にとどまらない、反省的均衡がもつ私たちの日常の思考とのつながり!と膝を叩きながら読んだのでした。